何かって言うと、まず、登場人物が年寄りだって言うことね。そうでしょ、第一の爺さん、第二の爺さん両方年寄り。
それからもう一つの特徴は、登場人物の性格が変化しないということなんですね、いい爺さんは最後までいい爺さん、悪い爺さんは最後まで悪い爺さん。年寄りはだいたい変化しないんだ。まあ僕も80歳の年寄りですから、変化しないて言えるんですけど。
そこ行くと逆にね、子どもや若者が主人公の場合、昔話は、その主人公が変化しながら成長する姿を語る。と言えます。
“子どもや若者が主人公の場合は、その主人公が変化しながら成長する”僕はそこに注目します。一番わかりやすい例は、「ヘンゼルとグレーテル」だと思う。
「ヘンゼルとグレーテル」、あの女の子グレーテルを思い出してみてください。始めのうち、森の中に捨てられる時はさ、お兄ちゃんが帰りの道しるべにってパン屑を置いていくよね、それが鳥に食べられちゃった。そうするともう泣いちゃう。すごい泣き虫な子。お母さんが裏木戸に鍵掛けたりしたらもう泣いちゃう。泣き虫な子です。
だけどどうだろう最後の場面で、あのお菓子の家に閉じこめられて、お兄ちゃんは、馬小屋に入れられて動けない。その時、彼女は魔女に言われたよね「このパン焼き釜が十分熱くなったいるか、中に入って見てこい」って。その時、ぱっとひらめいて「私どうやったらいいかわからないわ、やって見せてちょうだい」って言って魔女をボーンとパン焼き釜の中に突っ込むでしょ。あの時のグレーテルの姿思い浮かべてみてください。すごいしっかりした子になってない?決然たる姿があるよね。どうしよう、どうしよう、なんて言ってないよね。ボーンとやってる。
話の冒頭でのあの泣き虫な子と比べたら大きな差があると思いませんか?
昔話は、どうもこの差を語りたがってるようだね。子どもや若者が主人公の場合には、この差を語りたがっている。ほとんどそうです。
もちろん、実人生の中であっても、子どもは変化しながら成長していきます。だけど、実人生のなかでの成長の変化って時間がかかるじゃない。毎日毎日一緒にいる大人には、なかなか気づきにくい。
昔話は、そういうように“認識しにくい成長の変化を短いストーリーにしてはっきりした変化として見せてくれる。”そういうものだと思う。
だから話のはじめでは、主人公はダメな子が多い。いじめられてる子、勉強できない子、勉強嫌いな子、寝てばかりいる子、働かない子そんな子がとても多いです。それがどっかで力を出して、自分の幸せを獲得していく。
そういう意味では、とても明るい人生観持っているよね、昔話って。
みんな可能性あるよって話にしてますよ。
その変化を見せてくれる昔話で、とても、僕が大事だと思っているのは、「寝太郎」なんです。

◆「寝太郎」からのメッセージ
「三年寝太郎」っていうと、日本中に「寝太郎」の話はあるのでみんな知ってると思うんだけど。僕が聞いたのは、この話です。福島で聞いた話です。
昔ある村に一人の若者がいた。ちっとも働かないで寝てばかりいるもんだから、みんなにバカにされて「あいつは役立たずだ。寝太郎だ」って言われて、そうやって何年も過ぎた。
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