昔話は残酷な出来事をたくさん語ります。平気で語ります。だけど残虐には語らない。
血なまぐさくは語らない。そこ気をつけて下さい。写実的には語らない。血が流れたとは語らない。
もっともひどい間違いは、何年か前に日本で流行った『ほんとうは怖ろしいグリム童話』っていう本、あれは完全にでたらめです。
ぼくはグリム童話専門家ですからはっきり言いますが、完全にでたらめです。ラプンツェルとか白雪姫とか主人公の名前を使い、そして塔に閉じこめられたとか、主な出来事は使っている。だけど文章は全く違います。文章は全くでたらめです。あれは血なまぐさい エロ本です。読んでご覧なさい。あっ読まなくていいです。ぼくは専門家だからしょうがなく読みました。ヘドが出そうな気持ちで読みました。全くグリムと違うんです。
それでいて『本当は・・・』なんて書いてあります。これ、もし食べ物についてあれだけいい加減なことやっといて『本当は・・・』なんて書いたら、あれ偽装表示 として告訴されるでしょう。そう思います。
だけど子どもの文化だから放置されているんです。子どもの文化だから。日本は、いかに子どもの文化が軽んじられているかってことに気がついてください。そして特に昔話については無知です。
皆さんの中にもお解りでない方がいらっしゃると思うんで、僕はあえてそういう話してるんですけどね。どうぞ目を開いてください。騙されないでください。あの本は日本で250万部も売れたそうです。今でも置いてあるそうです 。
世界の昔話の学会があります。僕は、その学会で副会長を15年やってきましたから、世界中の学者と今でもつきあいがあります。世界中見回してグリム童話をあれだけ血なまぐさく、そしてあれだけエロティックに書き替えて『本当は・・・』なんていっているのは日本だけです。
書いたやつもけしからんけど、それを許しているお客、買っている人たちの方も問題です。あんなものをベストセラーなんかにする国自体が、国民自体がすごく下劣なんだと思う。どうですか?皆さん考えてください。多くのの読者は女の子。中学生、高校生ぐらいの女の子なんだそうです。
ほとんどの読者はね、『本当は・・・』なんて書いてあるから本当はああいうもんだと思っていたって言うんです。すごい文化的詐欺だと思わない?文化的な詐欺だよ。子どもの文化だからこういうことになる。どうぞマスコミのいうこと信じないでください。
あれをやったとき新聞マスコミが、またグリム童話についての新しい意見が出たといって褒め称えたんです。どうぞ惑わされないでください。自分で勉強してください。僕は本当にそれをお願いしたい。
子どもを守るのは、子どもの身近な大人しかいない。親とかね、図書館員とか、保母さんとか子どもの身近な大人しかいない。どうぞ勉強してください。僕は元来教師ですから、勉強してくださいとはっきりいいますけどね。本当にそうです。食べ物についてはみんな気使っているでしょう?無農薬とか探してるんでしょう?だったら同じです。昔話も良いものを探してください。
要するに昔話は実態を語らないということ。大きな森、暗い森、それしか言わない。覚えていてください。
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