◆昔話は大事な場面は同じ言葉で語る ⇒子どもは、知っているものとまた出会いたがっている
さっきの馬方の話へ戻ります。
あの話聞いていただいて、同じ言葉が何回も出てきたことに気がついたでしょう。
「これまて。その馬の片荷おいてけ。おかなきゃおまえを取って食うぞ」あれ5回やってるんです。昔話は同じ場面は同じ言葉で語る。大事な文法です。
“昔話は大事な場面は、同じ言葉で語る”これは解りやすいよね。誰だって同じ言葉で言ってもらった方が解りやすい。大人だってそうでしょう?いわんや子どもだったら同じ言葉で言ってもらった方が解りやすい。
だけどね、僕は、本当はもっと深い意味があるなあと思っている。
こういう事なんです。子どもの時のこと思い出してください。
子どもがさ、自分が気に入った絵本があったら何回でも読んでくれって言う。自分が気に入ったお話があったら何回でも聞かせてくれって言うよね。あの気持ち考えてみてください)。
“子どもは、知っているものとまた出会いたがっている”と言えるんじゃない?
“子どもはもう知っている物とまた出会いたがっている”子どもの行動に本当によくあるでしょう?「この毛布がないと寝られない」とか「このお人形がないと寝られない」とか。あの気持ち、子どもってすでに知ってる物ととても出会いたがっているんですよ。
それって僕はこういうことだと思うよ。子どもは成長する、成長するってことは別な言葉で言えば、未知の世界へ入ることだよね。子どもは未知の世界へ入っていくんです。毎日毎日。這い這いしかできなかった子が、二本足で立ち上がる。これも未知の世界。
今まで二本足で跳ぶことができなかったのに、跳べるようになる。これ未知の世界だよ、それは成長してること。成長する=未知の世界に入ること。
未知の世界に入ることだから子どもにとっては嬉しい。
今までできなかったことができるんだから。だけど同時にちょっと不安があるんだよね。
その時どうするかっていうとね、自分が今までの短い人生、5年とか、6年とか短い人生だけど、その短い人生の中で出会った物、絵本とか、出会った人とか、毛布とか、出会ったお人形さんとかそういう物にまた触れて自分の人生を確認して、そしてまた前へ行く。
そういうことだと思うなあ、子どもの成長って。
決して電車のように一直線に前へ行かないよ。戻ってきて自分の人生確かめて、そしてまた前へ行く。その繰り返しだよね。
子どものことよく見ててごらん、本当にそういう行動やるよ。
一番解りやすいのはさ、子どもが泣いちゃった時、悲しい時ね、ずっと愛してた自分のお人形抱いているってことあるでしょう、あれ。不安なときに知ってるものに出会って安心するのよ。とっても大事なことだと思う。
子どもの成長にとって昔話はね、不思議にそういうふうにね、子どもの成長にとって何が大事なのかって知っているんだよ。
不思議にって言ったって、不思議じゃないよね、だって伝えてきたのはみんなおじいちゃんやおばあちゃんだから。子どもの成長を沢山見てるわけ。自分の子どもも育ててるし孫も見てるし。だから子どもの成長にとって何が必要のかって、知ってんだよね、昔話ってのは。
ですからそういうふうに我々普通の大人が見過ごすようなことを、ちゃんとやっといてくれる。同じ場面が来たら、同じ言葉で語って。不思議だよね。世界中の昔話がそれやってるんだよ。

その意味でね、僕は図書館なんかに呼ばれるとね、こどもの本のコーナーを見せてもらうのね。
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